小遣いを頂く
もう一つ驚かされたことは、ソ連に着きまして一夜明けていよいよ出発するということで玄関にまいりましたら、例のクレミント司教さんが私共に絵葉書きくらいの紙包みを下さった。開けてみましたら、何と中にお金が入ってるんです。そして、「これから一週間ソ連にいるうちに、ソ連の通貨でないと買えない場所もある。だからこのお金を使って下さい」と言うんです。
「いったい、このお金はどれくらい値打ちがあるんですか」と聞いてみましたら、私に下さった金額はソ連の労働者の月給の二ヵ月分なんだそうです。他の人は、申し訳ないけど、一ヵ月分だと言うんです。
なにしろ神父さんから小遺いをもらっちゃったんだから、これはどうもたいへんなことだなあと思って通訳に聞いてみたんです。そうしたら、二ヵ月分の月給というのは日本円に換算すると10万5千円くらいだと言うんです。ちょっと少ないような気もするんですけれども、なにしろソ連は家賃も医療費も教育費もいらないんですから、これはたいへんな金額なんです。共産党の国というのはその点ではいいですね。必要なのは自分が食べる分だけで、それ以外のものはまったくいらない。
WCRPのお役で私は、13年間世界中を回らせて頂きましたけれども、お布施を頂いたのは初めてなものですから、もうビックリしまして、その日の夕食の時にお礼を申し上げた。そうしましたら、「ロシア正教では、どんなお客さまであっても、こちらの招待でおいでになられた場合には、こうするのが常道でございますから、どうかご遠慮なくご自由にお使い下さい」と、こういうご返事でした。