いまや世界共同体の建設は人類の目標となっております。それは世界政治と経済の仕組みの大きな変革だけを意味するものではありません。究極的には、人間の精神の改革をぬきにして、世界共同体の建設は絶対に達成されるものではありません。たしかに人間の心を改革しない限り、世界の平和は達成できないということは事実であります。そして、その人間の心を変えることこそ、私たち宗教者の使命であります。
しかし、人びとは〝人間の心を変えるなどということは簡単に出来るものではない〞と申します。しかし、人間の心を変えることは、物を変えるより易しいと言えるのではないでしょうか。
ここに一本の材木があると致します。これを鉄に変えるようにと言われても、貴方にはそれが出来るでしょうか。これに対して〝貴方の心を占領している争いの気持ちや貪欲を捨てなさい〞と言われたならば、貴方は〝絶対に不可能である〞とは言われない筈です。恐らく、誰もが〝やれば出来るかもしれない〞と感じられるに違いありません。しかも、心を変えることは一瞬にして出来るケースは多々ございます。仏教でいう〝娑婆即寂光士〞とは、そのことを指しているわけであります。
私どもの立正佼成会が、そして、皆様方が懸命に布教に取り組んできたのも、人間の心は改造することが出来るという可能性を信じているからに他なりません。心を変えることによって幸せになった人々をたくさん私は見て来ましたし、皆様も又、そうでありましょう。
スモッグによって都会に住む私たちが、空の星を見ることが出来なくなったように、現代の人びともエゴイズムと合理主義と物質によって神仏を見失ってしまったことは否定できません。なればこそ、先ず私たち宗教者自身がエゴを克服し、互いに研鑽し合い、全ての宗教と人びとを包み込む、新しい宗教に脱皮した時に初めて、宗教は世界と人類に平和をもたらし得ると私は申し上げたいのであります。その開拓者こそがIARFであり、その意味で私は、IARFの繁栄を心から祈念致しまして、私のご挨拶とさせて頂きます。
ご清聴まことに有り難うございました。
昭和五十六年七月二十六日 (ラィデン、ノートヴェッカーハウト・レーベンホルスト会議場チャペルで)
タイトル名
別巻_00_00_第二十四回国際自由宗教連盟(IARF)世界大会〈オランダ〉記念講演〈プリンストン〉開会合同礼拝式の挨拶-0004
タイトルヨミ
ベッカン_00_00_ダイニジュウヨンカイコクサイジユウシュウキョウレンメイ(IARF)セカイタイカイ〈オランダ〉キネンコウエン〈プリンストン〉カイカイゴウドウライハイシキノアイサツ-0004
作成者
佼成出版社
(
コウセイシュッパンシャ
)
作成日
1982-11-15
和暦
昭和57年11月15日
言語
jpn
ボリュームタイトル
庭野日敬法話選集
ボリューム
別巻_第0章_第0節
人物キーワード
庭野日敬,開祖さま
内容
別巻_第二十四回国際自由宗教連盟(IARF)世界大会〈オランダ〉記念講演〈プリンストン〉開会合同礼拝式の挨拶