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法華三部経の要点 ◇◇84
立正佼成会会長 庭野日敬

信仰の功徳は人生全体に及ぶ

仏寿無量を知る真の功徳

 分別功徳品に入ります。この品は、前の如来寿量品で説かれた「仏の本体は、宇宙の万物を生かしている宇宙の大生命ともいうべき久遠実成の本仏であり、無量の寿命をもたれて常にわれわれと共にいてくださるのだ」という真実を心底から悟ることができた信仰者が得る功徳を十二項目に分け(分別し)て説き、併せて信仰者の心がけについて説いた章です。十二に分けて詳しく説いた功徳については『新釈法華三部経七巻』で読んで頂くとして、ここでは現代のわれわれにふさわしく、わかりやすくまとめてみましょう。
 まず第一に、仏さまが無量の寿命をもたれていて、いつもわれわれと共にいてくださることを確信することができれば、「ああ、ありがたい」という喜びがわき起こってくるはずです。この喜びこそが信仰者でなくては得られない功徳なのです。
 さらに進んで、仏さまのご寿命が無量であれば、その仏さまと本質的に同じである自分の仏性も、無量の寿命をもっていることを理解することができます。仏寿無量という真実は、そこまで読み切って初めて無限の功徳となるわけです。
 ところが、自分ひとり内なる心にそのような功徳を得ても、世の中の多くの人びとが相変わらず迷いの中にあって我(が)の角突き合いをしているのでは、その争いは必ず自分の身にも及んでくるわけで、結局はほんとうの幸せを得ることはできません。ですから、自分がつかんだ真実を一人でも多くの人のために説き、その幸せをおすそ分けしなければならないのです。

身体にも生活にも現れる

 さて、この「分別功徳品」の後にも、「随喜功徳品」「法師功徳品」と、信仰の功徳について説く章が続いています。したがって、ここで功徳ということについてあらまし考えておくことにしましょう。
 心に得る功徳については先に述べた通りですが、心が変われば身体にも影響がないはずはなく、人生全体にも変化が起こることも常識からしても理解できることです。
 身体に及ぼす影響は、近年大いに発達した「心身医学」が臨床的に証明していることで、心配事があれば食欲がなくなり、恐怖を覚えれば心臓がドキドキするぐらいはだれにもわかることですが、心とは一見なんの関係のなさそうな目の病気や皮膚疾患やぜんそくやじんましんなどでも、その原因が精神作用にあることの多いことが実証されています。
 また、信仰生活に入って心の持ち方が変われば、自分の仕事や生活に対する態度も変わり、人生そのものが上向きになりますから、物質的にも恵まれるようになるのはごく自然な成り行きです。
 伝教大師がいみじくも言われたように「道心に衣食(えじき)あり」なのです。
 以上に述べたような功徳は、信仰の結果として自然に現れてくるものですから、素直にありがたく受け取ればよいのです。なにも「信仰は心だけの問題だから、その他の功徳は一切不要だ」などとこだわることはないのです。


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