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法華三部経の要点 ◇◇92
立正佼成会会長 庭野日敬

すべては一に発し一に帰す(4)

未来、人類は一つ心になる

 「釈迦牟尼仏を有り難く思って礼拝せよ」という虚空からの声を聞いた宇宙のあらゆる生あるものはいっせいに合掌し、娑婆世界に向かって「南無釈迦牟尼仏」と唱えた、とあります。これを「咸皆帰命(かんかいきみょう)」といいます。咸(ことごと)く皆お釈迦さまの教えに帰依するということです。
 お釈迦さまが説かれた教えは絶対の真理です。どの宗教の人も「なるほど」と思い「そのとおりだ」と納得せざるをえません。すでにそのことは始まっており、世界各国のすぐれた宗教者たちがそのように言明することをわたしはこの耳で聞いています。
 一般の人々はまだそこまで進んではいませんが、未来においてはすべての人が必ずそうなるとここに述べられているわけです。そうなると地球上には悪人もいなければ、愚か者もいなくなり、それぞれ違った個性を持ちながらも、りっぱな人格をそなえ、正しい生活をするようになりましょう。ですから、「咸皆帰命」とは「未来人一」のことであるとされているのです。

すべての行為が仏心に合致

 つぎに、虚空からさまざまな宝ものが降ってきて、地上に達する瞬間にただひといろの美しい帳(とばり=幕)に変じて諸仏を覆った、とあります。このことを「遙散諸物(ようさんしょもつ)」といいますが、この瑞相(ずいそう)は、宇宙のあらゆる生あるものが釈迦牟尼仏をはじめとする諸仏を供養もうしあげたということです。
 供養には、仏前にお花や供え物を上げる利供養と、礼拝・読経などをする敬(きょう)供養と、身体をつかって仏さまの教えを実践すること、つまり菩薩行という行(ぎょう)供養とがありますが、仏さまがいちばんお喜びになるのは行供養であることは言うまでもありません。すべての宝ものがただひといろの美しい帳に変じ諸仏を覆ったというのは、この行供養の象徴にほかなりません。
 ですから「遙散諸物」とは、現在は人々の行いが善悪さまざまであるけれども、未来においてはすべての行いが仏さまのみ心にかなった菩薩行になるという点において一致するということを述べたもので、これを「未来行一」といいます。

地球上が一つの仏土となる

 そうなると、十方世界には区別がなくなり、ひとつづきの仏土となってしまう、とあります。これを「通一仏土」といって、未来のすべての人が一つの正しい法のレールにのって、完全に調和のある世界をつくることができるということから、「未来理一」をあらわしているとされています。
 現在航空機の発達によって世界のほとんどの地が一日の航程に縮まり、通信機器の発達によって、地球の反対側のものごとも瞬時に知ることができるようになりました。そして、ある地に大地震などがあれば、他の国々からその日のうちに救護・医療のための人員が送られるようになりました。
 ベルリンの壁が消えたことに象徴されるように国と国との区別もしだいになくなり、EC(欧州共同体)やASEAN(東南アジア諸国連合)などいろいろな国が協力してものごとを処理するようになりました。
 これらのことからみれば、一歩一歩「世界は一つ」になりつつあります。つまり、「通一仏土」ということが、少しずつではあるが実現しつつあるということができましょう。


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