○庭野開祖会長 (一同 拍手)(咳払い)ご来賓の皆さま、議長、(咳払い)そして紳士淑女の皆さま、このたびわたくしは、(咳払い)はからずも、素晴らしい、テンプルトウしんを、(咳払い)テンプルトン賞をちょうだい致しましたが、世界には、わたくしよりはるかにすぐれた宗教上の、業績をあげられた方々がたくさんおられますにもかかわらず、わたくしに受賞の光栄を賜りましたことを、心から感謝を申し上げる次第でございます。と同時に、わたくしとともに世界宗教者平和会議のために、過去10年間にわたって協力してくださった同志の方々の賜物であることを、特に申し添えておきたいと存じます。
講演に当たって、まず申し上げておきたいことは、わたくしは学者ではございません、え、ただ仏陀(ぶつだ)の教えのままに実践している一(いつ)仏教徒にすぎないということであります。そのわたくしが、いま、足りないながらも、人びとの幸福と世界の平和のために、努力のできえました、ことは、少年時代に受けた祖父からの影響であるということであります。
わたくしは、日本(にほん)の北部にある新潟県の山の中の寒村に育った者でありますが、わたくしをかわいがってくれました祖父が、どんな小さな虫でも、自分で食べるぐらいのことはしているではないか、まして、人間として、生まれたからには、世のため人のために役立つ人間にならなければいけない、ということを常々わたくしにいい聞かせるとともに、自らも村びとの苦しみ、悩みのために献身しておりました。その祖父の言葉と、姿がいつしかわたくしの意識の底にしみこんだのでありましょう。のちにわたくしをして宗教の世界に目を向けさせる要因となったことは確かでございます。
さて、現在のわたくしの精神的な土台となっているものは、申すまでもなく、仏陀(ぶつだ)の教えであります。菩薩としての使命感であります。ところが、仏教のいちばん根本の教えとなるものは、三法印であるといっても過言ではございません。その三法印とは、諸行無常、諸法無我、涅槃寂静、この三つを申します。その第1番目に諸行無常とは、一切の、現象は時々刻々に変化をするということであります。心も物質も、固定、不変と見える木や石さえも、常に変化をして、えー、おります。えー、物質の究極のものとして、不変と思われておりました原子でさえも、その内部では、常に動き、変化していることが、近代科学によって明らかにされております。
ましてや、わたくしどもの体もまた、時々刻々に変化をしてることは申すまでもありません。
とは申せ、人は老い、やがて滅する、そのような、はかない、意味での変化を中心に仏陀(ぶつだ)は、この諸行無常を説かれたのではありません。