それは目連尊者のお母さんが、自分の子がかわいくて、その子にりっぱな勉強をさせて、そして偉い人にしようというお母さんですから、きわめてこれはもうあたりまえのお母さんなんですね。ところが欲張りであったと。非常にわが子、わが子と、あまりにも自分のことだけを真剣に、すべての生活がそこへ集中してしまっておった。あのように仏弟子になるところの目連尊者、しかも神通第一という、十番弟子の中でも舎利弗か目連かというような最もすぐれたお弟子さんの一人で、神通力を持っていなさるからあの世の状態がごらんになってわかる。そして神通力でもってごらんになってみると、お母さんが地獄の一劫で苦しんでいるというのが見えたというのです。ですからまことに皮肉な話なんです。
どうして仏教にこのような目連尊者のお母さんのことがですね、十大弟子の一人、十大弟子でも一番か二番かというような、最も十人のうちでもエリート的な存在であったその人がこうしてお母さんの罪障をですね、みんな仏教徒が知っておるように──これは二千五百年ですからどのくらいの数の人がこのことを聞いたかわからないと思うのでありますが、そういうようにどうも偉い人の罪障を掘り出して、そして何とかかんとか言っておるのは、まことにどうもある意味では思わしくないような感じもいたしますけれども、それほどに人間の欲というものが禍いを起こすということなのであります。
いまのロッキード問題、こういう問題ももうお聞きになっておわかりのように、欲というものが禍いしてあのような問題が起きている。ですからお金をもらった人はさだめし毎日がひやひやですね、目連尊者のお母さんとおんなじ地獄の一劫で苦しんでおると思うのであります。そのうちに何か偉い人まで司直の手が伸びるようなことを言っておりますが、われわれのように一銭ももらってない人はきわめておもしろい話のように聞いておられますけれども、これはご当人にしたら大変なことだと思うんです。