開祖さまご法話テキスト『一心』 1982年10月 
ご命日式典

  •    お会式は大きな布教活動の一つ

     皆さま、本日はようこそお参りくださいました。
     もう十月、お会式の月を迎えました。東京よりひと足早く、私の郷里の菅沼でお会式が行われ、こちらからも多数行っていただきましたが、県知事さんまで来られて、大変なにぎわいだったとのことです。
     もともとお念仏一辺倒、法華経とは縁の薄い土地柄でしたが、菅沼に道場ができ、皆さんがお参りに行ってくださったりしているうちに、近辺の子供の遊びの中にも『南無妙法蓮華経』のお題目が聞かれるようになったということです。ここで毎年のお会式が行われるようになったということは、念仏の土地であるという意味でも、大きな布教活動につながっているわけです。
     ところで、念仏宗には法然上人、浄土真宗には親鸞聖人、そして真言宗には弘法大師さまと、どの宗派にもそれぞれの祖師がおられるわけですが、お祖師さまといえば、だれもが日蓮聖人を思い浮かべます。それはなぜかというと、六十一年の生涯を捧げて、お釈迦さまの本懐経たる法華経こそ、人類救済の教えであることを、はっきり打ち出されたからです。

  •    お会式は大きな布教活動の一つ

     皆さま、本日はようこそお参りくださいました。
     もう十月、お会式の月を迎えました。東京よりひと足早く、私の郷里の菅沼でお会式が行われ、こちらからも多数行っていただきましたが、県知事さんまで来られて、大変なにぎわいだったとのことです。
     もともとお念仏一辺倒、法華経とは縁の薄い土地柄でしたが、菅沼に道場ができ、皆さんがお参りに行ってくださったりしているうちに、近辺の子供の遊びの中にも『南無妙法蓮華経』のお題目が聞かれるようになったということです。ここで毎年のお会式が行われるようになったということは、念仏の土地であるという意味でも、大きな布教活動につながっているわけです。
     ところで、念仏宗には法然上人、浄土真宗には親鸞聖人、そして真言宗には弘法大師さまと、どの宗派にもそれぞれの祖師がおられるわけですが、お祖師さまといえば、だれもが日蓮聖人を思い浮かべます。それはなぜかというと、六十一年の生涯を捧げて、お釈迦さまの本懐経たる法華経こそ、人類救済の教えであることを、はっきり打ち出されたからです。

  •    ソ連を訪れて

     さて、ご承知のとおり、このたび、長年の希望が実現し、ソ連を訪問してきました。思えばWCRPの発足準備会のころから数えて、十四年の歳月が過ぎています。
     ソ連は共産主義の国ですが、二億五千万の国民のうち、正式の共産党員というのは一千万だけだそうです。これに対して、ロシア正教の信者が六千万、イスラム教徒が五千万、それに蒙古から伝わった仏教の信者を加えると、国民のおよそ半数の人たちが信仰をもっているわけです。
     革命以来六十年間、「宗教はアヘンなり」と言った時代もあったようですが、ともかく現在は、行ってみまして、宗教に対して寛大な国だというふうに感じました。
     十九年前、日本の宗教界の代表十八人が、核兵器禁止を訴えて世界を回ったことがあります。その時はロシア正教と連絡がなかったせいもあって、実に冷たい態度だったのですが、今回の訪問は、この六千万の信者をもつロシア正教のご招待ということで、まことに行き届いたおもてなしを頂戴しました。
     このロシア正教の渉外局長、ボロンスキー氏など、京都会議の準備会にも出席されたご縁があり、そのために大変な喜びようで、私ども一行六人に一人一人頬ずりして歓迎され、われわれ、その髭が痛くて閉口したくらいです。
     WCRPを提唱した時もそうでしたが、今回のソ連訪問についてもいろいろ心配してくださる向きもありましたが、私としては、いやしくも宗教を信じる者は、会って話せば必ずわかるという考えですから、全く気にしないわけです。
     お経巻に『若しは信、若しは謗、共に仏道を成ず』とあるように、仏さまは、信じる者、信じない者の差別なく、皆一様に一仏乗として抱きかかえ、舵をとっていらっしゃるわけです。ですから、余計な気を遣うことはないと思うのです。
     到着しますと、モスクワ空港からホテルまで、特別仕立ての車で直行です。十字路で信号が赤になっても、お巡りさんが警棒を振ってとおしてくれるので、天下御免で、なかなか結構な気分でした。
     それからは先方にお任せで「この広いソ連を訪問するのに、たった一週間ではどうにもならんじゃないか」と文句を言われたりして、びっしり詰まった日程に従って行動してきたわけです。それこそ寸暇もない忙しさでしたが、仏さまに使っていただくことを有り難く感謝して、やらせていただいた次第です。
     着いたその日に、早速ロシア正教の総主教テイミンさまの特別の邸宅に招かれ、丁重な歓迎と、併せて今日まで私のやってきたことに対し、過分のお褒めの言葉を頂戴して恐縮したりしました。
     その次に、外務省の極東第二部の部長さんに会って第一日の日程を終え、それからは、主として宗教関係のところを回りました。
     そういうところで、大勢集まっておられる神父さん方を前に、私はいつも「私は仏教徒として、信仰についてお話し合いに参りました。人類の念願である世界平和を、どうすれば実現できるかといえば、世界中の人々が、仏教の精神を体して生活していただくことが、まず何よりも間違いのない方法だと考えております」ということを、一貫してお話してきたのです。

  •    ソ連を訪れて

     さて、ご承知のとおり、このたび、長年の希望が実現し、ソ連を訪問してきました。思えばWCRPの発足準備会のころから数えて、十四年の歳月が過ぎています。
     ソ連は共産主義の国ですが、二億五千万の国民のうち、正式の共産党員というのは一千万だけだそうです。これに対して、ロシア正教の信者が六千万、イスラム教徒が五千万、それに蒙古から伝わった仏教の信者を加えると、国民のおよそ半数の人たちが信仰をもっているわけです。
     革命以来六十年間、「宗教はアヘンなり」と言った時代もあったようですが、ともかく現在は、行ってみまして、宗教に対して寛大な国だというふうに感じました。
     十九年前、日本の宗教界の代表十八人が、核兵器禁止を訴えて世界を回ったことがあります。その時はロシア正教と連絡がなかったせいもあって、実に冷たい態度だったのですが、今回の訪問は、この六千万の信者をもつロシア正教のご招待ということで、まことに行き届いたおもてなしを頂戴しました。
     このロシア正教の渉外局長、ボロンスキー氏など、京都会議の準備会にも出席されたご縁があり、そのために大変な喜びようで、私ども一行六人に一人一人頬ずりして歓迎され、われわれ、その髭が痛くて閉口したくらいです。
     WCRPを提唱した時もそうでしたが、今回のソ連訪問についてもいろいろ心配してくださる向きもありましたが、私としては、いやしくも宗教を信じる者は、会って話せば必ずわかるという考えですから、全く気にしないわけです。
     お経巻に『若しは信、若しは謗、共に仏道を成ず』とあるように、仏さまは、信じる者、信じない者の差別なく、皆一様に一仏乗として抱きかかえ、舵をとっていらっしゃるわけです。ですから、余計な気を遣うことはないと思うのです。
     到着しますと、モスクワ空港からホテルまで、特別仕立ての車で直行です。十字路で信号が赤になっても、お巡りさんが警棒を振ってとおしてくれるので、天下御免で、なかなか結構な気分でした。
     それからは先方にお任せで「この広いソ連を訪問するのに、たった一週間ではどうにもならんじゃないか」と文句を言われたりして、びっしり詰まった日程に従って行動してきたわけです。それこそ寸暇もない忙しさでしたが、仏さまに使っていただくことを有り難く感謝して、やらせていただいた次第です。
     着いたその日に、早速ロシア正教の総主教テイミンさまの特別の邸宅に招かれ、丁重な歓迎と、併せて今日まで私のやってきたことに対し、過分のお褒めの言葉を頂戴して恐縮したりしました。
     その次に、外務省の極東第二部の部長さんに会って第一日の日程を終え、それからは、主として宗教関係のところを回りました。
     そういうところで、大勢集まっておられる神父さん方を前に、私はいつも「私は仏教徒として、信仰についてお話し合いに参りました。人類の念願である世界平和を、どうすれば実現できるかといえば、世界中の人々が、仏教の精神を体して生活していただくことが、まず何よりも間違いのない方法だと考えております」ということを、一貫してお話してきたのです。

  •    理解してくれた足元からの実践

     ソ連最高会議副議長のゲラシウイ氏も、初めは「クレムリンに民間の日本人が入ってくるとは、あんたは実に度胸のいい、勇気のある人だ」などと言っていましたが、こちらが「人類は皆、仏性をもった仏の子だと信じているから、勇気も決断も別にいらないんですよ」という調子でいくので、次第に柔和になりいろいろと話し合うこともできたわけです。
     その時、「ソ連とアメリカという大国同士が、もし間違って戦争を始めたりしたら、人類は滅亡でしょう」と言うと、「それはわかっている」ということで、平和でなければ人類に幸せはないと、特に強調しておりました。そこで「それだけは、どうか心に留めていていただきたい。この平和のために、私たち世界の宗教者は活動しているのです」と申し上げたのです。
     やはり、何ごとも実際に見てみないとわからないもので共産主義の国というと、宗教とはおよそ縁が薄いように感じていたのですが、実際は大変盛んなのです。ザゴロス大修道院に案内されると、三百年前の建物をはじめ、数々の古い建物が立派に保存され 中に入ると、「信は荘厳より」というのは、まさにこのことかと思うほど、柱も、絵の額縁も、すべてがまぶしいくらいの黄金色に輝いています。
     ちょうど礼拝中でしたが、何人もの神父さん方が、素晴らしい美声で力強い声を揃えてバイブルを唱和している、その雰囲気というのは、本当に素晴らしいものでした。
     聞けば、毎年、百人以上の青年が、神父を志して修道院に入ってくる中から、特に声のいい人をとっているとのことでしたが、そういう熱心さといい、六千万という信者の数といい、ソ連の宗教の実情がよくわかると思います。
     革命後六十年の年輪がそうさせたとも言えるでしょうが、その以上に、信仰というものが、人間にとってどんなに大切かを物語っていると思います。
     中国に行きました時も、中国の宗教者がプリンストン会議に初めて参加をして以来、それまでとガラリと変わり、まず刑法に「政治家が宗教家に弾圧を加えた場合は、三年以下の禁固に処す」という条文が加えられ、また「去年、信教の自由を憲法に明記しました」ということも知らされました。
     これは、会議に参加された代表の方々が、それぞれ、北京、南京、上海などの街で帰朝報告をし、これをきっかけに盛り上がった意向によって、原則というものを非常に大切にし、容易なことでは変更しない中国で、こうした変革をなしとげたわけで、ここにも宗教家の結束、努力が、歴然と結果を現しています。
     ソ連でも今回、宗教問題評議会をはじめ訪問した各所で、世界平和や宗教協力などの問題が真剣に受けとめられ、いろいろな質問もされました。
     そういう時、私は「仏教では、在家の者、つまり人類すべてに対して、まず第一に五戒というものが授けられております」ということから、不殺生戒、不偸盗戒、不妄語戒、不邪淫戒、不飲酒戒の説法をさせていただきました。その結果、世界平和という理想を実現するためにいちばん大切なものは、一人一人が足元の日常生活を整えることだということを、あちらの方もよく理解されたようです。

  •    理解してくれた足元からの実践

     ソ連最高会議副議長のゲラシウイ氏も、初めは「クレムリンに民間の日本人が入ってくるとは、あんたは実に度胸のいい、勇気のある人だ」などと言っていましたが、こちらが「人類は皆、仏性をもった仏の子だと信じているから、勇気も決断も別にいらないんですよ」という調子でいくので、次第に柔和になりいろいろと話し合うこともできたわけです。
     その時、「ソ連とアメリカという大国同士が、もし間違って戦争を始めたりしたら、人類は滅亡でしょう」と言うと、「それはわかっている」ということで、平和でなければ人類に幸せはないと、特に強調しておりました。そこで「それだけは、どうか心に留めていていただきたい。この平和のために、私たち世界の宗教者は活動しているのです」と申し上げたのです。
     やはり、何ごとも実際に見てみないとわからないもので共産主義の国というと、宗教とはおよそ縁が薄いように感じていたのですが、実際は大変盛んなのです。ザゴロス大修道院に案内されると、三百年前の建物をはじめ、数々の古い建物が立派に保存され 中に入ると、「信は荘厳より」というのは、まさにこのことかと思うほど、柱も、絵の額縁も、すべてがまぶしいくらいの黄金色に輝いています。
     ちょうど礼拝中でしたが、何人もの神父さん方が、素晴らしい美声で力強い声を揃えてバイブルを唱和している、その雰囲気というのは、本当に素晴らしいものでした。
     聞けば、毎年、百人以上の青年が、神父を志して修道院に入ってくる中から、特に声のいい人をとっているとのことでしたが、そういう熱心さといい、六千万という信者の数といい、ソ連の宗教の実情がよくわかると思います。
     革命後六十年の年輪がそうさせたとも言えるでしょうが、その以上に、信仰というものが、人間にとってどんなに大切かを物語っていると思います。
     中国に行きました時も、中国の宗教者がプリンストン会議に初めて参加をして以来、それまでとガラリと変わり、まず刑法に「政治家が宗教家に弾圧を加えた場合は、三年以下の禁固に処す」という条文が加えられ、また「去年、信教の自由を憲法に明記しました」ということも知らされました。
     これは、会議に参加された代表の方々が、それぞれ、北京、南京、上海などの街で帰朝報告をし、これをきっかけに盛り上がった意向によって、原則というものを非常に大切にし、容易なことでは変更しない中国で、こうした変革をなしとげたわけで、ここにも宗教家の結束、努力が、歴然と結果を現しています。
     ソ連でも今回、宗教問題評議会をはじめ訪問した各所で、世界平和や宗教協力などの問題が真剣に受けとめられ、いろいろな質問もされました。
     そういう時、私は「仏教では、在家の者、つまり人類すべてに対して、まず第一に五戒というものが授けられております」ということから、不殺生戒、不偸盗戒、不妄語戒、不邪淫戒、不飲酒戒の説法をさせていただきました。その結果、世界平和という理想を実現するためにいちばん大切なものは、一人一人が足元の日常生活を整えることだということを、あちらの方もよく理解されたようです。

  •    高く評価された本会の宗教活動

     最高会議の副議長さんをはじめ、行く先々で高く評価されたのは、佼成会の真面目な宗教活動でした。先ごろの、あの署名運動、短期間に二千七百万もの署名を集めた積極的な行動力や、それを支える平和への関心の高さ――そういったものへの賛嘆の声を、どこに行っても聞かされましたし、再度にわたる国連での私の提唱も、幸いにして、大変なお褒めの言葉を頂戴できました。このことは、ぜひとも皆さんにご報告しなくてはならないことです。
     滞在中、朝は朝食から、夜はホテルに帰り着くまで、それこそ一日中付き添ってお世話くださったクリーメント神父さんが、ある時バイブルの一節をひいて「初め、人間は一人であった」ということを言われました。なかなか意味の深い言葉です。人間は一人であったなら人間の宗教も一つしかなかったわけで、ですから宗教の始まりは一つのもので幾つもあるわけがないという、つまり、インドの宗教でいう『万教同根』という本質と相通じる意味だと思いました。
     そうした意味でも、私どもが仏さまの教えをそのまま実行しておれば、根本は世界共通で、どこへ行っても、何かに抵触して咎められるというようなことはありません。
     今後も、手をたずさえて、世界平和の実現を目指し、自信をもって活動していこうではありませんか。
     以上、ソ連訪問の実情の一端を報告して、きょうの説法に代えさせていただきます。

                                 (文責在記者)

  •    高く評価された本会の宗教活動

     最高会議の副議長さんをはじめ、行く先々で高く評価されたのは、佼成会の真面目な宗教活動でした。先ごろの、あの署名運動、短期間に二千七百万もの署名を集めた積極的な行動力や、それを支える平和への関心の高さ――そういったものへの賛嘆の声を、どこに行っても聞かされましたし、再度にわたる国連での私の提唱も、幸いにして、大変なお褒めの言葉を頂戴できました。このことは、ぜひとも皆さんにご報告しなくてはならないことです。
     滞在中、朝は朝食から、夜はホテルに帰り着くまで、それこそ一日中付き添ってお世話くださったクリーメント神父さんが、ある時バイブルの一節をひいて「初め、人間は一人であった」ということを言われました。なかなか意味の深い言葉です。人間は一人であったなら人間の宗教も一つしかなかったわけで、ですから宗教の始まりは一つのもので幾つもあるわけがないという、つまり、インドの宗教でいう『万教同根』という本質と相通じる意味だと思いました。
     そうした意味でも、私どもが仏さまの教えをそのまま実行しておれば、根本は世界共通で、どこへ行っても、何かに抵触して咎められるというようなことはありません。
     今後も、手をたずさえて、世界平和の実現を目指し、自信をもって活動していこうではありませんか。
     以上、ソ連訪問の実情の一端を報告して、きょうの説法に代えさせていただきます。

                                 (文責在記者)