別巻_00_00_第二回アジア宗教者平和会議〈ニューデリー〉開会の挨拶(IARF)世界大会〈オランダ〉記念講演〈プリンストン〉開会合同礼拝式の挨拶-0005
第二回アジア宗教者平和会議「ニューデリー」開会の挨拶
アジア宗教者平和会議議長 庭野日敬
本日、ここに多くのご来賓をお迎えし、第二回アジア宗教者平和会議を開催するに当たり、ごあいさつの機会をお与えくださいました会長、議長ならびに皆さまにあつく、お礼を申し上げる次第でございます。
加えて、この会議準備のために長い間、ご努力くださいましたインドの皆さま、そしてアジアの実行委員の皆さまのご苦労に対しまして、心から感謝の意を表したいと存じます。シンガポールでの第一回アジア宗教者平和会議に続いて、この魅力あふれるインドにおいて、第二回会議が開かれますことは、私の無上の喜びとするところであります。
とくに平和主義に徹したガンジー翁をはじめとする多くの聖者を生み出したインドにおいて、会議が開かれますことは、私の二重の喜びと言わねばなりません。
さて、アジアの宗教者によるアジアの会議を開こうではないかという声が起こりましたのは、今を去る八年前のベルギーでの第二回世界宗教者平和会議の時でございました。アジアは、世界の陸地の三分の一を占め、人口においては、実に世界人口の約二分の一を擁するのみならず、古代メソポタミア文明、インド文明、中国文明など数多くの素晴しい文明を生んで参りました。さらにはユダヤ教もヒンズー教も仏教もキリスト教もイスラム教も、すべてこの地に発生いたしております。その半面、アジアは長きにわたってヨーロッパや日本によって植民地化され、あるいは占領されるという悲しむべき歴史をもっております。そうした過去を振り返る時、私もまた、一日本人として深い慚愧の念にかられるのであります。
今や世界の現状は、デタントから再び力の対立に変わり、大国は軍備拡張に狂奔し、人類の不安はますますつのりつつあります。もし、世界先進諸国が殺し合うための軍事費のわずか一パーセントでも削減し、それを苦しむ国々に捧げるならば、どれほど神さま、仏さまのみ心にかなうかを考えますと、私は物質文明とは何か、先進国とは何か、人間とは何か、改めて深く問い直さねばならぬと思うのであります。
かかる意味において、ほとんどすべての宗教が、このアジアに発生した事実が示すように、アジア人はすぐれた精神性を有し、すぐれた霊性を有しております。従って『霊的次元から見た今日のアジアにおける人間的諸問題』を主たるテーマに選ばれたことは、極めて意義あることと申さねばなりません。私どもアジア人は、本当の意味での人間らしい生き方において、世界にその範を示すべき使命があると存じます。そのために、これから始まる会議が実りあるものになることを願ってやまない次第でございます。そのことを私は心から祈念いたしまして、私のごあいさつに代えさせて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。
昭和五十六年十一月七日 (ニューデリー、ビギャン・バワン国際会議場で)